階段の踊り場にて

階段の踊り場にて

末っ子のPTA関係の用事で小学校へ出向きました。

ちょっとした手違いがあり、会議室で行われる予定の時間まで少し間があいてしまいました。どこかでコーヒーを飲むほどの時間はなく、といって会議室でほとんど知らない人と気まずい沈黙を共有するのも面倒くさい……。

しかたなく、私は小学校をブラブラしていました。

最初は末っ子のいるクラスの前で掲示物などを見てまわり、あとはなんとなく階段をのぼって他の教室の廊下を通ったりしていました。

普段はあがらない、高学年教室のあるほうへと階段をのぼっていくと、そのまま「屋上」と書かれた標識が目につきました。

なんとはなしにそこまで階段をのぼると、危険防止のためか屋上へつづく鉄の扉は施錠されています。それは当然といえば当然なのですが、なんとなくがっかりして、それからぼんやりと辺りをみましました。

とたんに「懐かしい」という気持ちがわきあがりました。

階段の踊り場、は、子供の頃、なぜかしら特別だった場所です。踊り場には古いロッカーがあり、そこも鍵がかかっています。そういえばもう大学生の長男はこの踊り場で友達と取っ組み合いのケンカをしてロッカーをへこませ、学校から親も呼び出しを受けたのでした。

次男坊は反対におとなしい気質で、どちらかといえば友達の数も少なく、個人面談で一度「お子さんは休み時間にひとりで屋上に踊り場に座って本を読んだりしていますよ」と言われ、親としてはずいぶんと不安になったものです。

わが子がそうして、踊り場に向かっていったように、そういえば、私も小学生とか中学生の頃、踊り場でたむろしていたことがあったなぁと思い出しました。

それから急に、小学生の高学年のとき、はじめて男の子にチョコレートを渡したのも屋上へ続く階段の踊り場だった、とハタと思い出しました。

行き止まりの踊り場は、普段は先生の姿もなく、屋上が解放されて遊んでいい日以外は人気がない場所だった。

大好きだったN君に「踊り場にきて」とささやいて、私は白い上履きをはいて踊り場でじっと彼がくるのを待っていたのです。

ああ、それで結局、彼は友達と三人でやってきて、その友達がはやしたてるのでチョコレートを渡して逃げるように階段をかけおりたこと、ホワイトデーは楽しみにしていたのに、戻ってきたのは母親経由でN君の母親から「いただいたようなので」みたいな口上つきで高級なキャンディの詰め合わせがきたこと、「あんた、あの子にチョコあげてたの?」と母親が驚いた様子で私に言ったことを、そういうことすべて、みんな忘れていたのに、踊り場に立った私は鮮やかに思い出したのです。

階段の踊り場。

今も子供たちの「告白場所」なのでしょうか。ちょっとロッカーに隠れて覗き見したい気分です。

末っ子の初恋

小学校1年生ぐらいですと、男の子よりはるかに女の子のほうがしっかりしています。もうちょっと言うと「ませて」いますね。

幼稚園ぐらいから「好きな子いる~」みたいなことは口にしてはいましたが、まぁ意味もわからず、一緒に仲良く遊ぶ子の名前をだしている程度だった末っ子です。

この末っ子が、「ボクのこと、○ちゃんは嫌いだって言うよ」と悲しげに言いました。

○ちゃんは、女の子の名前ですがはじめて耳にしたので、幼稚園で一緒だった子ではないようです。

私が根掘り葉掘り聞いたのがまずかったのか、なにかしら末っ子は拒否反応を急に示して「もういい、ママ忘れて」みたいに言いだしました。それを大学生の長男に言うとげらげら笑いだして、ちょっと俺が聞いてみよう、と言って末っ子をコンビニにおやつ買いに連れ出してしまいました。

戻って来た長男に後から聞いたところによると、クラスにとても可愛い子がいて、その子が大好きになった末っ子は、幼稚園時代の無邪気さのままに「ぼく、○ちゃんだいすき~」っとやったみたいなんですね。

でもそのしっかり者のかわいい○ちゃんは、「私は縄跳びがへたっぴな子は嫌い」と宣言したそうです。ちなみに末っ子は縄跳びが不得意でクロス跳びもできないそうです……。

しかもその女の子は末っ子に「それにあなたは私のタイプじゃないから」と言ったそうなんですよ。

長男は「すげーな~、女の子って。まだ7歳で、あたしのタイプじゃないとか言っちゃうんだもんな~」って妙な感心してましたけどね(笑)

意味が本当にわからなくても、7歳ぐらいですと女の子のほうがはるかに語彙が豊富で、またおとなっぽい口ぶりを真似たりする子も多いようです。

わが家では大きい兄弟がいるせいか、小学生になってもいまだ赤ちゃん扱いの末っ子にとっては、なかなか、おませな7歳女子は手に負える相手ではないのでしょう(笑)

「あいつには、そんな女はやめとけ、って言っておいた」

……長男のアドバイスもどうかと思いますが。

ま、こうして人生ままならないってことをこれからだんだんと覚えていくんでしょうね。7歳にしてはや失恋(笑)

末っ子の女難が続かぬよう祈るばかりです。